私は、最愛の夫と四年程前に死別をしている。
精神的にかなり依存をしていたので、立ち直るのはずいぶんと大変だった。
私にとって夫の存在は、親友であり父の様でもあった。
彼にまつわる人間関係とその周りの出来事が自分の世界のほとんどであったため、別れは強制的に「私の世界」をがらりと変えた。
放り出された世界で、日々の出来事に翻弄された。そんな中で、自分自身と向き合うことは、痛みと苦しさを伴った。
それでも、「出逢いも別れも同等に素晴らしい。」と言えるのは、別れによって多くの事を学び、人生がより豊かになったからだ。
夫の死の半年後に私の父も亡くなった。精神的にすっかり参ってしまった私は、臨床心理士のカウンセリングを受けた。
話をする中で出て来たことは、夫への想いや悲しみよりも、意外なことに、小さな頃からの親への不満、生きることの苦しさ、トラウマになっている出来事についてだった。
そんな最中、子どもの頃に起きたトラウマを刺激する話を聞いたり、行かなければならない場所で、それを彷彿させる事件が起きたりと、偶然とは思えないことが続いた。
それに向き合い、人に話を聞いてもらったり、助けを求めることによって、気づけば長いあいだ心を締め付けて来た、トラウマが気にならなくなっていった。
大きな流れの中で、その出来事を振り返ってみると、大いなる存在の計らいのようなものを信じるよりほかない。
自分の意思とは別の何かと、より善く生きたいという願いの連鎖によって、「今ここ」に存在していることが分かる。
今の自分は、四年前と別人の様に感じる事がある。
だから夫をどんなに愛していたとしても、それはその時点での最善最良であって、もう完全に終わってしまったのだと素直に思う。
懸命に生き、必要な体験を互いにし尽くした。
今の自分を支え、ともに過ごす人たちは、辛い別れを経たからこそ出逢えたものだ。
生きていれば楽しい事ばかりではないけれど、色々な感情や様々な出来事によって、人生はより豊かに味わい深くなっていく。
重ねた愛おしい時間が自分を創っていると同時に、新たな出逢いにより変わり続ける。
その面白さに、ようやく気がつき始めたところだ。
この文章は2018年2月、Facebookに投稿したものに加筆・修正したものです。
作品タイトル 「空へ」
作品サイズ 約53×31cm
使用画材 パステル
2017.11.13