これを書きながら、膝の上でくつろぐ猫に白ワインをこぼした。
水気を嫌う彼女は、迷惑そうな顔をして逃げ出した。
10代の頃からの親友が結婚する。先週、電話で報告をもらい、たけちゃんも喜んでいるね。生きているうちに報告が出来れば良かったのだけれどと笑っていた。
結婚式に呼ばれたら、私が斉藤和義の「ウエディング・ソング」を夫のギターの伴奏で歌おうなんて冗談交じりで話していたのだ。
〜 Wedding bouquet 〜
そんな出来事を別の友人に話そうとしたら、急に言葉が出なくなり涙がこぼれた。
別に悲しい訳ではない。すごく嬉しいことなのに得体の知れない感情が一気に込み上げ、嗚咽で息が出来ず、びっくりして焦ったら余計に呼吸が苦しくなった。
頭が痛くなるほど泣き疲れて、その晩はそのまま眠った。
思えば、亡くなった夫のことを話せる人も少なくなり、時間とともに良くも悪くも感覚は遠ざかり、リアルな彼の言葉や表情を思い出したのは久しぶりだった。
複雑に絡み合った、その思いに名前をつける事は難しいし、つける必要もないだろう。
自分というものを随分と知ったつもりでいたが、裏切られたというか、感情や記憶の深さを思い知ったとでもいうか。
そんなことがあった一週間。
ほんのりと葡萄の匂いのするクウが、大きなため息をついた。猫のため息はとても可愛い。
桜満開、とてもいい夜だ。
この文章は2018年3月、Facebookに投稿したものに加筆・修正したものです。
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