絵と言葉と

生きることはアートだ。生きるを笑おう、生きるを遊べ!

『骨は珊瑚、眼は真珠』池澤夏樹 / 著

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【 ブックレビュー & アート 】
 
本からインスピレーションを得て絵を描く試み

いつか本の表紙や挿画を描きたい

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『骨は珊瑚、眼は真珠』池澤夏樹
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本を読みながら、何度も眠気が襲ってきて、ウトウトしてしまった。

この短編集『骨は珊瑚、眼は真珠』には、眠る人が多く出てくる。

「眠る女」は、ボストンに住む女が、夢を見ている間に、かつて久高島の祭イザイホーに参加してた記憶を蘇らせていく物語だ。

起きた時には、夢の中の出来事はもう覚えていない。

けれど、確かに私としてそこに在ったという断片的な記憶が、彼女を静かに満たしていく。
 
 
男が夢で、明るい水の中に、膝を抱え身体を丸めて眠る人々の群れを見る「眠る人々」

男は自分の満ち足りた生活が終わり、いつか彼らと交代するのか。

それとも、彼らの見ている夢を自分は演じているのではないかという問いを持つ。
 
 
9編の物語を読みながら、私は登場する彼女になったり、彼になったり、最後の一羽のシマフクロウになる。

主人公に成り代わって物語を体験すると言うよりは、まるで夢を見ているかのように、実態の自分はこちらにありながら、あちらの世界を俯瞰で覗き込むような感覚。

かつての記憶、かつての自分、かつての片割れ...

あの世から、過去や未来や宇宙へと、あちらとこちらを夢見るように、意識は私を離れ運ばれてゆく。
 
夢うつつに本を読みながら、私が私と思っている〈この存在〉は、不確かでおぼろげなもののように思えてくる。
 
 
「北への旅」は人類滅亡の話で、この時期に読み返してドキリとした。

私だったら、迫りくる死をどう受け入れ、最期の瞬間をどんな風に過ごすだろうか。
 
 
9つの物語はバラエティーに富んでいて、切なくなったり、ほっこりしたり、いくつもの人生を旅するように読んだ。

誰かの記憶ではなく、私という魂の中に在ったであろう記憶を旅する短編集。

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文春文庫版は絶版

集英社単行本は電子書籍あり

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レビュー & 絵 Mami Tamura

作品タイトル 旅する記憶
作品サイズ 148×100mm
使用画材 色鉛筆、鉛筆

2020.04.29
 
#ブックレビュー #アート

 

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